プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

二期会”ナクソス島のアリアドネ“

 11月26日土曜日の公演に行ってきました。僕の大好きなこの演目を1ヶ月の間に、ウィーン国立歌劇場とライプツィヒ歌劇場との提携での二期会の、2つの公演を聴けてとても幸せです。

 まずは、指揮!ハンブルグ州立歌劇場の総監督を長く務める女性指揮者、シモーネ・ヤング。3年前にそのハンブルグでコンビチュニー演出のちょっとおもしろい“マイスタージンガー”を彼女の指揮で聴きましたが、素晴らしいものでした。この日のナクソス島、マレク・ヤノフスキとは全く違った音を聞かせてくれました。ヤノフスキの繊細で透明で、まるで弦楽四重奏のような音に対して、ヤングの音は優美で豊穣感に溢れ、小さなオケが大きく聞こえました。何か、ヤノフスキの管弦楽的な指揮に対して、マエストラは完全にオペラの指揮というような違い。ドタバタ劇に近い、ユーモアに溢れたこの演目には、ヤングの指揮のほうがあっているかと思いました。ただ、個人的には、ヤノフスキの音のほうが鮮烈なインパクトを受けたのが正直なところ。

 歌手陣も非常に充実していました。特にプロローグが終わり、オペラの舞台になってから、ここでビシッとしまりました。3人の妖精の三重唱が素晴らしい。そしてそれに続いてのアリアドネの林正子、今日の最大のBravaでした。透明感に溢れた声ですが、適度な重みがあり、上品で、役柄にぴったり。声量もたっぷりあり、声を張り上げている感じがまったくしません。バッカス(やや高音が苦しかった)との二重唱も素晴らしいものでした。ツェルビネッタの髙橋維も「偉大なる王女様」のアリアを、実に魅力的に歌い上げました。中音と高音の声質がほとんど変わらずに、高いところまでグィッと音を上げていくところが、素敵でした。いつもCDでデセイのツェルビネッタを聴いていますが、高橋さんのはプティボンみたいでした。

 そして、特筆しなければならないのは、演出。完全な現代への読み替えの舞台で、プロローグは後ろに駐車場がガラス越しに見える楽屋裏。これが、西銀座の地下駐車場を晴海通りの地下から見たところにそっくりでした。ハルレキンたち、ブッファの一団がハーレーダビッドソンみたいなバイクで到着したような設定がおもしろい。ただ、その後、狭い感じのこの地下空間に大人数がすし詰めになったところに、掃除のおばさんや、愛の架け橋をつなぐ役としてオペラのラストにも登場するキューピッドなども動き回り、やや詰め込み過ぎという感じがしました。しかし、オペラになって、階上の広い宴会の場(?)では、充分な空間がある感じがして、ほとんどミュージカルに近いような歌手たちの動きが楽しめました。特に、ツェルビネッタが高さ1メートルはあるバーカウンターの上から直立のまま倒れて道化たちの腕の中で受け止められるところは、思わず「アッ」と叫びそうになりました。

 今回の二期会のナクソス島、指揮とオケ、歌手、そして演出が見事にひとつの結晶になった、傑作だったと思います。

指揮:シモーネ・ヤング
演出:カロリーネ・グルーバー
東京交響楽団

執事長:多田羅迪夫
音楽教師:小森輝彦
作曲家:白𡈽理香
プリマドンナ/アリアドネ:林 正子
テノール歌手/バッカス:片寄純也
士官:渡邉公威
舞踏教師:升島唯博
かつら師:野村光洋
召使い:佐藤 望
ツェルビネッタ:髙橋 維
ハルレキン:加耒 徹
スカラムッチョ:安冨泰一郎
トゥルファルデン:倉本晋児
ブリゲッラ:伊藤達人
ナヤーデ:冨平安希子
ドゥリヤーデ:小泉詠子
エコー:上田純子


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