プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

セビリアの理髪師@金沢

 フランス人指揮者(名前はロシアっぽいのですがパリ生まれ)の、ミンコフスキが金沢でセビリアを振るというので、一泊で家内と小旅行をして来ました。ミンコフスキを聴くのは初めてですが、昨年の夏にスウェーデンの小劇場、「ドロットニングホルム宮廷劇場」でドン・ジョヴァンニを振ったのが素晴らしかったと聴いていました。この日も、本当に素晴らしいオペラを聴かせてくれました。

 まずは序曲が始まって、ちょっとびっくりしたのは、全然今風でないこと。軽やかで早い感じを予想していたのですが、ゆったりとして上品。そして、クレッシェンドがあまり積極的的に聞こえてこないのです。モーツァルトを信奉するという指揮者らしく、アンサンブルを重視した美しい仕上げの序曲。このトーンはオペラ全体を支配しました。実に優雅です。聴かせどころのロジーナの””Una Voce Poco Fa (今の歌声は?)”の場面では、相当練習したんだと思いますが、ベルカントの歌唱の後を一瞬遅れて、オケがそーっとなぞっていく感じ。実に素敵でしたね!

 ミンコフスキ、人間味溢れるという感じです。歌手の歌が終わって拍手がやまないと、一旦袖に下がった歌手を手招きで呼び戻してコールにこたえさせたり、歌手の手にキスをしたり、なごみます。

 歌手がまた素晴らしい。名前を聞いたことの無い人ばかりでしたが、メゾのセレーナ・マルフィはMETのドン・ジョヴァンニでツェルリーナを歌っていたそうです。さきほどの”Una Voce〜“、久々に良いのを聴きました。アジリタは高音ではそれほどではないのですが、中音、低音部でうまく廻すのが、かっこいい!というか色っぽいんですよね。(見栄えも良さそうなんで、オペラグラス持参しなくて失敗....) そして、伯爵役のテノールのデヴィッド・ポーティロ、まだ若い(24歳)んですが、素晴らしく甘いロッシーニテノールの声です。若い頃のホセ・ブロスを思わせます。最近は復活してきたとは言え、国内ではあまり良いのを聴けない2幕目最後の「大アリア」が極上でした。ペーザロに行ったみたい!実際、彼はペーザロでもデビュー済みだそうです。フィガロのアンジェイ・フィロンチクも若い!なんと22歳でこの役は初だそうですが、貫禄さえ感じるような余裕たっぷりの歌いでした。バルトロを演じたカルロ・レポーレも、ベルタの小泉詠子も、バジーリオの後藤春馬(新国立研修所時代から応援中!)も良かったですね。

 そして、この歌手たちが、演奏会形式とは言え、ほとんどセミオペラ形式と言うような感じで、舞台を動き廻るのです。なにしろ演出家の名前(イヴァン・アレクサンダー)が出ているくらいですから、鬼ごっこはするわ、バルトロのひげ剃りにクリームは塗るわ、で舞台上もとても楽しめました。去年、マドリッドで聴いた演奏会形式の”ルイーザ・ミラー“もそうでしたが、最近のヨーロッパの演奏会形式は、「演出付き」が多いのでしょうか?日本でもオペラシティやサントリーホールなど、舞台にスペースがある劇場を使って、そういう試みを増やしてほしいものです。

 まったく、金沢で一日だけではもったいないような公演でした。

 そして、この日は金沢市街にある、イタリア好きにはチョー有名な、イタリア料理店”トラットリア・クアクア“で東京や大阪から集まったオペラ仲間と食事。実に美味しかったです。これから金沢に行く機会が増えそうです。

指揮 マルク・ミンコフスキ
アルマヴィーヴァ伯爵 デヴィッド・ポーティロ
バルトロ カルロ・レポーレ
ロジーナ セレーナ・マルフィ
フィガロ アンジェイ・フィロンチク  ほか
合唱 金沢ロッシーニ特別合唱団
管弦楽 オーケストラ・アンサンブル金沢
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