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プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

オテロ@オーチャードホール

 いやいや、本当に久しぶりのブログになってしまいました。オペラは7月の“ノルマ”以来2ヶ月ぶり、コンサートも東フィルのミョンフンのマーラーから1ヶ月以上夏休みを取っていました。いつもなら、夏はバレエがあるのですが、今年はいまひとつ食指が動くものがありませんでした。その間、今年はオペラ仲間が多数ザルツブルグに行っていたので、クルレンツィスの”皇帝ティートの慈悲”やら、マリオッティ指揮の“二人のフォスカリ”(ドミンゴです。)そして、チケットの時価が定価の10倍まで上がったというムーティ、ネトレプコのアイーダを見たという生々しいフェイスブックが送られてくるのを、よだれを垂らしながら過ごしていました。どれも素晴らしいと思うのですが、やはりマリオッティのフォスカリ、聴きたかったです。夏休みはオペラには行かなかったのですが、そういう悪い(?)刺激があったため、11月と来年2月にまた海外での公演に行く予定を立ててしまいました。

 さて、9月10日のバッティストーニの“オテロ”。個人的なオペラシーズンがヴェルディで始まるのは素晴らしいことです。しかもバッティストーニ!“ナブッコ”、“リゴレット”、“イリス”と来て、次は欧州では良く振っている“ラ・トラヴィアータ”かな、と思っていましたが、オテロに来ましたね。彼は、ヴェルディの初期物はあまり好きでないようですから、この選択になったのでしょう。

 僕が初めて生で聴いたオテロは2003年のムーティ率いるスカラ座でした。指揮台に立つとほぼ同時に雷鳴の序奏が斬りかかってくるのに、圧倒されました。以来、指揮台に立ってオケの顔を見てからおもむろに棒を振るオテロの指揮者は嫌いです。バッティは、まさに指揮台に立つか立たないか、まだ拍手が鳴っている時に棒を振りました。かっこいいなぁ。舞台に出てくる時からオテロが始まっているんですね。一幕目、あっという間に引き込まれました。プログラムで加藤浩子さんが、「一瞬のうちに襟首を掴まれてドラマの中に投げ込まれる快感」とありますが、まさにそうでした。一幕目は大音量のオケと合唱で嵐の中、帰還するオテロがいきなりヒーローとして登場する派手な場面なのですが、この日のバッティは、その中で、テンポ感をくずさずに、くっきりオケの音を出していました。ともすれば合唱にかき消されてしまうような音もきちんと聴かせて心臓の鼓動のようにテンポを保つ。これが、素晴らしかったです。その後、ロデリーゴを説き伏せる場面で、有名な“Se un fragil voto di femmina (その女の誓いが解きほぐせるのであれば) のところ(だと思うんですよね。イタリア語に堪能な訳では無いので、間違っていたらすみません。)で、バロックの舞曲のようになるテンポ感のところまで、最初の雷鳴からつながっているんです。この一幕目、本当に素晴らしい指揮だったと思います。

 2幕目以降、3幕、4幕と行くに従って、指揮もだんだん歌手に合わせるような場面が多くなりましたが、そこがまた、実に緻密で強弱、緩急をつけるところが、素晴らしい“オテロ”の音楽を作り出していました。本当に聴き応えがありました。オテロの音楽は指揮者によって、本当に表情が変わります。2013年のミョンフンのオテロも素晴らしかったです。スピーディで軽みがあって、躍動感がありました。バッティは、テンポ感とコントロールされた重厚さでしょうか?

 歌手陣では、エレーナ・モシュクのデズデモーナが素晴らしかったです。柳の歌に拍手が集中していて、これももちろん素晴らしかったのですが、僕としては、豊かな中低音部、特に弱音からボリュームを上げていくところが、ぞくっとするほど美しいと感じました。モシュクというと、何かジルダの印象が強いですが、デズデモーナ、良かったですね。ちなみに、柳の歌のところの、クラリネットが素晴らしかったです。これは、最近東フィルに加入して、今年の東京音楽コンクール木管部門で優勝したアレッサンドロ・ベヴェラリですね。まだ若い奏者ですが、東フィルも充実しています。

 さてモシュク以外の歌い手では、オテロとイアーゴは、“悪くはない”、英語でいうと”not too bad”という感じでしょうか?ま、英国人がこういうと、結構良いというニュアンスになるんですが。。イアーゴのインヴェラルディは、声は良いのですが、毒が無い。4月の新国立で同役を歌ったウラディミール・ストヤノフほど、「細い」感じはないのですが、動作や体型も含めて、どうもイアーゴというよりは人の良いファルスタッフという感じでした。このイアーゴは、設定では28歳ですから、ヌッチをベストと考えてはいけないとは思うのですが、奸計をめぐらし裏表のある役、今回の公演のポスターの白と黒が表すような役ですから、もう少しオテロというオペラを掴みきってほしいです。アンダーの上江さんで聴いてみたいと思いました。そして、オテロのフランチェスコ・アニーレ、各所で高音まできれいにあがる良いテノールだということはわかりましたが、情感の表し方にムラがありすぎて、ト書きを歌っているような感じを覚えました。8日に聴いた方は「良かった」と言っていたので、この日は調子が悪かったのかもしれません。4月のカルロ・ヴェントレの2幕目以降が素晴らしかったので、ちょっと比較してしまいました。

 エミーリアは新国立と同じ、清水華澄さん。うーん、素晴らしい!幕が締まりましたね。

 演出は、僕の友人たちには不評のようでした。プロジェクトマッピングを多用したものでしたが、ヨーロッパとアフリカの地図を写し出し、キプロスにフォーカスしていくところなど、僕自身は、なかなか新鮮で良かったと思います。4幕目のキャンドルの影などは音楽とマッチして美しかったです。

 今回の公演の立役者、やはりバッティストーニですね。歌手の多少の粗を充分に補っていました。

ヴェルディ「オテロ」演奏会形式

指揮・演出:アンドレア・バッティストーニ
映像演出:ライゾマティクスリサーチ

オテロ:フランチェスコ・アニーレ
デズデモーナ:エレーナ・モシュク
イアーゴ:イヴァン・インヴェラルディ
ロドヴィーコ:ジョン・ハオ
カッシオ:高橋達也
エミーリア:清水華澄
ロデリーゴ:与儀 巧
モンターノ:斉木健詞
伝令:タン・ジュンポ
合唱:新国立劇場合唱団
児童合唱:世田谷ジュニア合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー管弦楽団



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