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プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

新国立劇場「神々の黄昏」

 新国立劇場の今シーズン、オープニングの「神々の黄昏」、6回ある公演のうちの4回目に行って来ました。行く前からわかってはいたのですが、長いですね。休憩2回入れて5時間55分。前回の「ジークフリート」の公演の時は、長い上演時間を耐えられるように、劇場で特製クッションの貸し出しサービスがあったのですが、今回はなかったです。残念。多分、クッションを使用している人の座高が高くなってしまうので、苦情でも出たのかと思います。

 今回が、飯守泰次郎マエストロの新国立の音楽監督として最後の公演になると思います。来シーズンからは大野和士さんになりますから。その最後の指揮から出てくる音楽、とても良かったです。今までのリング3作、何か音の分厚さが足りない、特に金管が響かない、ゆらぎがない、、と、飯守さんらしさに欠ける音だったという感想を持っているのですが、今回ははじめて読売日本交響楽団を率いて、素晴らしい音を出してくれました。雄大でスケール感がありました。金管も、時々音がずれることもあったりと、やや粗いながら、偉大なワーグナーの音楽を聴かせてくれました。昨年のウィーン歌劇場のアダム・フィッシャーや、つい最近のキリル・ペトレンコが新しい時代のワーグナーだとしたら、飯守マエストロはクラシックな、帝国ホテルのビーフシチューのようなワーグナー。正統派ですね。

 ただ、音楽のボリュームに対して、1幕目は、歌手の声が良く聞こえない。これは、どうも歌手の調子が出ていなかったようです。ジークフリートのステファン・グールドも、彼の得意とする輝きのある声が出ていない。ブリュンヒルデのペトラ・ラングも声を口先で作っているような感じ。2幕目に入ると、ヴァルトラウテ役で出てきた、名歌手ヴァルトラウト・マイヤーが、素晴らしい歌を聴かせます。2007年のベルリン歌劇場、バレンボイムと共に来日して、イゾルデを歌った頃にくらべて、年齢も重ねて(現在61歳)声のシャープさは無くなりましたが、その分、熟成された奥行きのある、素晴らしい声。声量はそれほどではないのですが、オケの音の上を飛んできます。この人の歌唱と比べると、他の歌手の歌唱が今ひとつに思えてしまうのも仕方が無いか・・・・他の歌手も一流ですが、彼女は「超」が付きますからねー。ちなみに、2004年の舞台では、この役を藤村実穂子が歌い、素晴らしかったです。

 それでも第3幕になると、グールドもラングも見違えるように声の艶が増しました。で、最後の「ブリュンヒルデの自己犠牲」は聴き応えありましたね。
 ただ、一旦白い布の下で絶命したかに見えるブリュンヒルデが最後にがばっと両手を挙げて起き上がる演出は、なんだか不思議でした。ブリュンヒルデの犠牲により、また世界が回り出すという、”to be continued”を現したものかもしれませんが、なんか、ゾンビ映画かエイリアン映画の最後のシーンみたいでした。3幕目は音楽と歌唱が見事に呼応しあって、聴き応えありました。葬送行進曲なんか、ゾクゾクしましたね。

 歌手では、マイヤーの次にハーゲンを歌った、アルベルト・ペーゼンドルファーが多く拍手をもらっていました。安定した声のバスで良かったのですが、全体に声のトーンが単調で、あまり「悪い人」という感じがしないんですね。彼につけられた演出に動きがなさすぎたせいかもしれません。古い話になりますが、トーキョーリングの初回の2004年での長谷川顯のハーゲンの「悪人ぶり」が強い印象を保っています。日本人歌手は、皆、大健闘でした。グートルーネの安藤赴美子は、芯の強い(ややリリックだったが)、しかし、確固とした自分を持っていない薄情な性格を良く出していました。演技も敢えて淡泊な動きにしていて違和感がありませんでした。これに対して、全く「淡泊」でなかった、アルベリヒの島村武雄は2010年にも聴きましたが、癖のある、しかし、舞台で重要な役柄を声と演技で見事に出していました。彼が最後に袖から出てきて動き廻る演出はなかなか洒落ていました。

 しかし、ゲッツ・フリードリッヒの演出は、4作全体通して、あまり良いとは思いませんでした。フィンランドでの公演にくらべると、トンネルも簡素化されていたようですし、何より動きが少なくて、せっかくの新国立の舞台の機能を生かし切っていない感じがします。今回の「神々の黄昏」も、おもしろかったのは、グンターに扮したジークフリートをレンズのような大きなガラスで見せるところぐらいで、あとは全体に「退屈」。特に読み替えもない演出ですから、もう少しアイデアが欲しいですね。3幕目で懐中電灯で客席側を照らしたりするのは、あまりにも陳腐で、目がチカチカしてちょっと苛つきました。僕自身としては、演出はブーイングしたい感じです。新国立のリングは、やはり、キース・ウォーナーのトーキョー・リング、それも初演の時が一番良かったと思います。新国立でこれからまた、リングをやるのなら、あの演出を研ぎ澄ましたものにしていくべきだと思います。あれは傑作演出です。

 9-10月は、なんだかワーグナーばかり聴いていました。ブログのタイトル変えなくてはならないですね。ちょうど今、イタリアではヴェルディ・フェスティバルが開催中。FBにはその様子がたくさん入って来ています。僕は11月初めにドミンゴのナブッコを見に行きますが、あとは、新国立のトラヴィアータ、と今年のヴェルディは、あと2つだけ。
そうこうしているうちに、もう年末ですね。早いものです。


指揮 飯守泰次郎
演出 ゲッツ・フリードリヒ
ジークフリート ステファン・グールド
ブリュンヒルデ ペトラ・ラング
アルベリヒ 島村武男
グンター アントン・ケレミチェフ
ハーゲン アルベルト・ペーゼンドルファー
グートルーネ 安藤赴美子
ヴァルトラウテ ヴァルトラウト・マイヤー
ヴォークリンデ 増田のり子
ヴェルグンデ 加納悦子
フロスヒルデ 田村由貴絵
第一のノルン 竹本節子
第二のノルン 池田香織
第三のノルン 橋爪ゆか
合唱指揮 三澤洋史
合唱 新国立劇場合唱団

 
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