プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

久しぶりにLAオペラで「真珠採り」!!

1週間のLA&ロスカボス旅行から帰りました。オペラは2つ。でもって、「ああ、ニーノ・マチャイゼ、マチャイゼ!!」状態。。4年ぶりにマチャイゼ熱にすっかりやられてしまいました。重症です。。

 生のマチャイゼを聴くのは、今回で4度目ですが、「真珠採り」は2014年のパルマに続いて2度目。ますます声に磨きがかかって、中音は真鍮のよう!高音になると金属的な感じがなくなり、それは美しいです。METと同じペニー・ウールコックの演出は迫力満点。4回見た彼女の公演のうち、3つはフランスもの。最初は、今回と同じ、「真珠採り」を2014年の3月にパルマのレッジョ劇場で。これで、まず完全にノックアウトされました。それで、そのすぐあと、彼女の公演スケジュールをチェックして、2ヶ月後の5月には、ロサンジェルスまで追っかけて、レアなマスネの「タイス」を聴きました。アタナエルはドミンゴ(バリトンでの)でした。(で、4つ目はロッシーニの「ランスへの旅」のフォルビル伯爵夫人@オランダ国立歌劇場。)この2014年は新国立で大野和士の「ホフマン物語」もありましたし、夏にはバレエで、オーレリ・デュポンのバレエを2日続けて見に行ったり、個人的には“フレンチイヤー”でした。

 で、今回のヴェニューは又、LAオペラです。今年の梅雨頃に“マチャイゼの真珠採り”をネットで見つけて、まだチケットが発売前だったのに、即、フライト取りました。こういうモチベーションを僕にもたらしてくれる演目は、シモン・ボッカネグラと真珠採りくらいだと思います。

 ロサンジェルスはつい2週間前までは、日本でも話題になったように、ひどい山火事が起きたりするぐらい暑かったそうで、10月なのに摂氏38度もあったのですが、到着した日は29度。ホテルを取ったマンハッタンビーチは、夜になると20度以下と快適でした。

 日本から米国にオペラを見に行くと言えば、METがメジャーでしょう。あとは、最近ルイゾッティが頑張っているサンフランシスコオペラか。でも、ロサンジェルス・オペラもなかなか良いのですよ。僕はこれで3度目ですが、とにかく音楽監督がドミンゴなので、彼のお友達のとても良い歌手を呼んでくれます。今回も、レイラがマチャイゼ、ナディールはカマレラと今、旬の一流どころです。来週のナブッコは、ドミンゴとリュドミラ・モナスティルスカですし、今シーズンはフレミングのリサイタルもあります。で、LAでの「真珠採り」、ほとんどの公演では指揮はドミンゴが振っているのですが、僕が行った28日は、代役のグラント・ガーション。おそらくドミンゴのスケジュールの問題でしょう。でもドミンゴの指揮はちょっと退屈なので、カーションで問題ありません。彼の指揮は、基本的に、首席指揮者のジェームズ・コンロンのスタイル。ゴージャスに膨らませて行きます。実にグランドオペラという感じ。LAオペラは公演の数こそそんなに多くはありませんが、コンロンが十八番としているフランスオペラを良くやります。(コンロンはアメリカの指揮者としては唯一、レジョン・ド・ヌール勲章をもらっているんです!)

 演出は、一昨年、METで大好評を博したペニー・ウールコックのものを基本に、元々オペラハウスではない、LAのドロシー・チャンドラーパビリオンの奥行きの無い舞台に合わせていました。それでも、なかなかの迫力です。この演出を見た友人や、今回同行した家内も、皆高く評価しているのですが、僕は、METのライブビューイングの時同様に、なんだかパイレーツ・オブ・カリビアンみたいで、ややゴチャゴチャしすぎな印象を受けました。でも、美しい序曲で紗幕の向こうでナディールとズルガが海の中を泳ぎ回るシーンは、とても素敵です。クプファーの「ラインの黄金」の冒頭で、ライン川の水中を乙女たちが泳ぎ回るシーンがありますが、あれを彷彿とさせます。それで、時代設定は、現代なんですね。セイロンの伝統的な民族衣装(?)を着ている登場人物が多いので、19世紀くらいの設定かなと思いましたが、ズルガの家に白黒っぽいテレビがあるのでわかりました。セイロンも行きたくなりますね。

 マチャイゼの最初のレイラは、パルマでデジレ・ランカトーレが、開幕2週間前に降板したので、急遽出演になったわけですけれど、これがとんでもなく素晴らしかったのです。その頃のマチャイゼと言えば、ヌッチと一緒にジルダ(リゴレット)を歌っている印象が強かったのですが、このフランスオペラでは真鍮のような筋の通った強い、切れ味のある声を聴かせてくれました。今回は、その後出産も経て、なんかたくましくなり、若い巫女からノルマみたいなトップの巫女になった感じです。中低音は、真鍮からプラチナになり、メゾソプラノではないかというくらいに、力強く、また感情表現も豊かに聴かせます。うっとりですねー。それでいて、高音はややリリックで、コロラトゥーラも使いながら、微妙なタッチで抜けるように歌い上げます。もう、目がハートになりました。中音だけ聴いていると、まさに「カラスの再来」というくらい、声の出し方が似ています。特にアリアの“Comme autrefois”(昔のような暗い夜に)”なんか雰囲気がそっくり。

 ただ、このオペラの中で、誰もが知っている有名なアリアといえば男声なんですね。「ナディールのロマンス」とも呼ばれる名曲「耳に残るは君の歌声」は1960年代のポップス界で、マランド楽団やアルフレッド・ハウゼ楽団、ポール・モーリア楽団などのアレンジで大ヒットしたので、むしろ原曲がオペラだということを知らない人のほうが多いのではないかと思います。オペラのほうでも、名録音が残っており、中でも50-70年代に活躍したフランス人テノールの“アラン・ヴァンゾ”が有名。僕もこの人の甘い歌声が一番好きです。他にもアルフレード・クラウス(この人の歌もYou Tubeで聴くだけで涙チョチョ切れます。)、ニコライ・ゲッダなど、是非聴いてみてほしいです。最近では、ロベルト・アラーニャ、ディミトリー・コルチャック、サルヴァトーレ・リチートラ(故)などが得意としています。ちょっとでも喉の調子が悪かったら歌えないという難しい代物らしく、藤原折江がこの歌を歌う前数日間は、細い骨が喉を痛めるのを嫌って、好物の鰻を食べなかったという話があります。息継ぎをするのも大変です。この日のナディールは、メキシコ人テノールのハビエル・カマレナ。ロール・デビューかと思います。一幕目はあまり調子が良くなくて、この曲の高音でも声が割れました。その後完全に安全運転になってしまって、ちょっと残念でしたが、息継ぎが全く聞こえないのはさすが!2014年のMETの「チェネレントラ」で、カウフマンの代役でラミーロを歌い、MET史上3人目のアンコール(bis)歌手になっただけのことはあります。この日も2幕目後の休憩後は、声量も増して、素晴らしい声になりました!。ただ、本質的にはやはりロッシーニテノールという感じがしました。ペーザロで聴きたい歌手です。望外に良かったのは、バリトンのアルフレード・ダザ、2014年(?)に新国立でジェルモンを歌っていますが、その時はあまり感心しませんでした。バスバリトンなので、ズルガのほうがぴったりなんです。ちょっと下品な感じの節回しもある漁師の親方の気分が出ていました。良かったです。レイラとナディールに対する、憎しみと愛の二面性を出す演技も素晴らしかったですね。

 このズルガとナディールの二重唱「聖堂の奥深く」は、男声二重唱としては、ヴェルディのドン・カルロスでの、カルロスとロドリーゴの二重唱と並んで美しい歌だと思います。両方とも男の友情以上のなんかを感じますね。しかし、この「真珠採り」、どこをどう切り取っても美しいメロディーばかり。ビゼーのオペラではもちろん、「カルメン」のほうが有名ですが、その10年前に書かれた「真珠採り」のほうが、現代のフレンチポップスにも通じる、わかりやすい美しさがあります。「パースの娘達」もそうですが、もっと日本でも上演されてもいいと思うのですよね。藤原歌劇団が来年2月にマスネの佳作、「ナヴァラの娘」を日本で初めて公演してくれますから、ビゼーのオペラも藤原に期待しましょう。もちろん、来年から新国立歌劇場の音楽監督になる、大野和士さんにも期待!

さて、これから4日間ほど、メキシコのビーチリゾート、“ロス・カボス”でリラックスして、またLAに舞い戻り、前述の「ナブッコ」を見ます。


CAST

Leila Nino Machaidze
Nadir Javier Camarena
Zurga Alfredo Daza
Nourabad Nicholas Brownlee

Conductor Grant Gershon
Director Penny Woolcock
 

 
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