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プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

“ノルマ”METライブビューイング

 いよいよ、METライブビューイングの2017-2018シーズンが日本にもやって来ました。僕は、この「オペラを映画館で見せる」というのには、どうも抵抗があって、今まで見に行った作品は2つか3つくらいです。大きな画面で、こちらが見るところを編集で指定されてしまうというのが、我が儘な性格に合わないようです。8Kとかになれば、映画館でも双眼鏡で見られるような感じになるのでしょうけど。。。不思議と小さな画面でDVDなどで見ていると、さほど気にならないのですが。

 とは言うものの、今シーズンは「ノルマ」と「ルイーザ・ミラー」は見逃せないなと思って、先日、東劇に行ってきました。「ノルマ」の生での鑑賞回数は、さすがに少なくて、過去には、2013年のザルツブルグの公演(バルトリ)、と今年の日生劇場でのデヴィーアの公演(2回)くらいです。あ、昨年のグルベローヴァの公演も行きましたが、これは悲しい結果になったので、回数に入りませんね。

 さて、今回のMETの公演はタイトルロールのソンドラ・ラドヴァノフスキーが、まずは注目。この人も生では聴いたことがありませんが、METでは2015-2016のシーズンで、ドニゼッティの「女王三部作」をすべて歌ったという強者。そして、昨今はフランスオペラにも進出している、メゾのスター、ジョイス・ディドナート。しかも指揮者は、僕の大好きなカルロ・リッツィなので、これを見逃す手はありませんでした。

 リッツィの指揮は、現代の「ノルマ」の音のデファクト・スタンダードとも言える、ピリオド楽器っぽい、切れの良い序曲で始まります。50年代のセラフィンの指揮(カラスがタイトルロール)のような、豊穣な音とは全く違います。しかし、リッツィはベッリーニの蠱惑的な音楽を、見事に響かせます。彼は音の中に自分の感情を込めるのがとても旨い。シモン・ボッカネグラなどでも、本当に独特の「泣かせる」音を出しますね。このMETの公演、ともすれば、歌手と舞台美術に話題が行きがちですが、リッツィの指揮あっての成功だと思います。

 ただ、一幕目は、ラドヴァノフスキーもポリオーネのジョセフ・カレーヤも喉が温まっていないのか、やや音がぶら下がります。(僕の耳が悪いのかもしれませんが。。。)Casta Divaも、今ひとつ迫力に欠けました。それでも、1幕目中盤あたり、アダルジーザが出てくるところからは、素晴らしい声を聴かせてくれました。二人の女声の重唱がこのオペラの魅力の大きな部分ですが、これは大満足です。しかし、おもしろいと思うのは、原曲ではソプラノとソプラノで歌われたこの2人が、METではソプラノのノルマとメゾのアダルジーザで歌われていて、一方のザルツブルグではノルマはメゾのバルトリで、アダルジーザはソプラノのレベッカ・オルヴェーラが歌ったという、逆の配置(?)になっていることです。過去のコンビで、素晴らしいと思っているジョーン・サザーランドとマリリン・ホーンはソプラノとメゾです。やはり、現在はこれが普通で、バルトリの場合は例外と言えるかもしれません。

 アダルジーザのディドナート、とても良かったですね。コロラトゥーラの多い演目ではないのですが、ところどころ装飾歌唱をするのが、グッと来ました。この人も生で聴いたことがないんですよね。ロッシーニ聴きたいなぁ。ヨーロッパは毎年1-2回行くのですが、METはせいぜい6-7年に一回。ですので、MET中心に活躍している歌手はなかなか聴けないんです。ニューヨークは遠いし、フライトも宿も高いし、なかなか行けませんね。

 歌手の中で、やや期待はずれだったのは、ポリオーネのジョセフ・カレーヤ。良い声なんですが、なんか歌いっぱなしという感じで、陰影がありません。本人も幕間のインタビューで言っていたように、「女たらし」な役柄を意識していたようなので、意識してそういう歌い方をしているのかと思いますが、ポリオーネには彼なりに真剣で悩みもあったはず。これは、ヴェルディ協会の理事のTさんが、フェイスブックでも言っていたことですが、痛く同意しました。その点では、ザルツブルグでのジョン・オズボーンのほうがずっと良かったですね。このことを、一緒に行った家内に話すと、「二人に同じ口説き文句使ってたし、ただの女垂らしよ。」と切り捨てられました。

 演出は、5つの舞台を上下左右から出現させて、すごいスペクタクル!歌手達も素晴らしい演技力を見せているのは、映画ならではのアップで良くわかりました。

 休憩入れて3時間半の公演、あっという間に終わった感じです。ただ、やはり、正直、生のバルトリ、生のデヴィーアの公演にはかなわなかたかなぁというのが、本音です。ところで、今回のライブ・ビューイングのプログラム、\1,440ですが、内容がすごく充実しています。大きさもヨーロッパの歌劇場のプログラムのサイズ。写真も美しく、内容も読み応えあります。是非、お求め下さい。


指揮:カルロ・リッツィ
演出:デイヴィッド・マクヴィカー
出演:ソンドラ・ラドヴァノフスキー、ジョイス・ディドナート、ジョセフ・カレーヤ、マシュー・ローズ

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