プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

バレエ“椿姫” by ジョン・ノイマイヤー

 1月は、ブログをすっかりサボってしまいました。と言うよりも、1月は観劇が1回しかなかったんです。東フィルの定期公演、ミョンフン指揮のジュピターと幻想交響曲でした。これは、また後でアップします。お正月に、すっかり「ものを書く」という作業から遠ざかってしまい、そのままずるずるとお休みになってしまいました。

 さて、2月の観劇予定は、海外も入れて6回もあります。そのうち3回がバレエです。今月はしっかり書きます! でもって、最初の公演が2月3日土曜日のマチネ@文化会館、ハンブルグバレエ来日公演の「椿姫」でした。期待した以上に素晴らしかったです。バレエの椿姫は、「黒のパドドゥ」は何回も見ていますが、全幕で見たのは2014年のパリオペラ座来日公演での、デュポンとモローでの舞台だけです。この公演は、僕の見たバレエ公演の中でも1−2を争う素晴らしいものでした。(もうひとつ挙げるとしたら、やはりデュポンのアデュー公演の「マノン」です。)この時は、二人の踊りに目を奪われてしまい、演目全体の構成を見る余裕がなかったのですが、今回は落ち着いて見ることができました。

 感動したのは、ノイマイヤーが作った筋立てです。原作の「椿姫」の序章で、著者のデュマ・フィス(椿姫のモデルになった、実在のアルフォンシーヌ・プレシ(商売名:マリー・デュプレシ)の愛人でもありました。)が、マルグリット・ゴーチェ(これが原作での椿姫の名前、オペラではヴィオレッタ・ヴァレリー)の遺品のオークションで、彼女の恋人アルマン・デュヴァル(オペラでは、アフルレード・ジェルモン)から贈られたアベ・プレヴォーの小説「マノン・レスコー」の装丁本を100フランという大金で競り落とすところから始まるのです。ノイマイヤーはバレエの初めにこのシーンをそのまま舞台に持ち込み、そして「マノン・レスコー」の本の中の世界を、マノンとデ・グリューを幻影のように踊らせてマルグリットを最後の幕まで苛むという筋立てに仕上げ、それをすべてショパンの曲にぴったりとあわせました。ノイマイヤーの能力の高さ(天才ですね!)をあらわしていると思います。このバレエは、ヴェルディの「椿姫」より、ずっと原作に近いのです。ノイマイヤーは「ヴェルディがこの心打たれる状況(黒のパドドゥの場面)に曲をつけなかったことは、わたしにはまったく理解できないことです。」と言っていますが、これはヴェルディの落ち度というよりは、オペラの「椿姫」の台本作家のマリア・ピアーヴェに力がなかったからだと思います。ノイマイヤーとピアーヴェは原作に対して同じ立場にいるわけで、その能力の差がはっきりと出ています。余談ですが、ヴェルディもこれに気づいていたようで、椿姫の後は、主要作品としては「運命の力」と「マクベス」だけはピアーヴェに任せたものの、その後の後期作品は、ボイートとギズランツォーニに書かせています。

 さて、本題に戻りますが、マルグリットを踊ったラトビア出身のアンナ・ラウデールは、基本動作が見事なまでに美しい。彼女のポワントほど美しいポワントを見た事がありません。つま先から膝までで感情を表現します。ショパンのバラード第一番で踊られる、前述の「黒のパドドゥ」の場面では、二人が最後の愛を確かめるのを、情熱の炎を押さえ込むように表現していました。オレリー・デュポンとエルヴェ・モローが舞台の空気を押して動かして陽炎のような流れを作る踊りだとしたら、ラウデールとアルマン役のエドウィン・レヴァツォフは、舞台の空気を切り裂くような踊りだと思いました。後者のほうがもちろんノイマイヤーの精神をより忠実に体現していると言えましょう。ただ、アルマンについては、レヴァツォフは、まさに若く愛に苦しむ役にはまり込んでいて適役だと思いましたが、モローのような「色気」がありませんでした。比較してもしかたないことですが、やはりオペラ座の手にかかったノイマイヤーも凄いものです。

 ノイマイヤーの舞台を見ていると、幕を追って、美しい建築が出来上がっていくようなそんな感じがします。プレルジョカージュやキリアンの白昼夢を見ているような舞台と違う実存感があります。ですので、パドドゥだけ見るよりは全幕もので見たほうがその建築の実存感をきちんと受け止められて、満足感も強いのだと思います。舞台の最後に78歳になるノイマイヤーが舞台中央に出て来ました。かっこいい!!!

 7日の水曜日はガラ公演、「ノイマイヤーの世界」です。楽しみです。

◆主な配役◆
マルグリット・ゴーティエ:アンナ・ラウデール
アルマン・デュヴァル:エドウィン・レヴァツォフ
ムッシュー・デュヴァル(アルマンの父):イヴァン・ウルバン

マノン・レスコー:カロリーナ・アグエロ
デ・グリュー:アレクサンドル・リアブコ

プリュダンス:パトリシア・フリッツァ
ガストン・リュー:マティアス・オベルリン
オランプ:リン・シュエ
公爵:グレーム・フルマン
伯爵N:マリア・フーゲット
ナニーヌ(マルグリットの侍女):ジョージナ・ヒルズ

演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:マルクス・レーティネン
ピアノ:ミハル・ビアルク、オンドレイ・ルドチェンコ


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