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プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

ウェルテル@新国立劇場

 3月24日、日曜日のマチネの「ウェルテル」に行ってきました。今回の目当てはなんと言ってもシャルロット役の藤村実穂子。とは言っても期待ばかりではありませんでした。彼女は、どちらかというとワーグナーやマーラーのイメージが強く、フランス物は、リサイタルでカルメンを歌ったのを聴いたくらい。(これ素晴らしかったです!)ですので、若いシャルロットはどうかな?と思っていましたが、さすがですね。芯のしっかりした声に、やや鼻に抜けるような柔らかさを加えて、余裕たっぷりの歌い方。素晴らしいです。2016年の砂川涼子のシャルロットが台本通りの20歳だったとすれば、藤村実穂子は25歳くらいかなという感じはありますし、タイトルロールのサイミール・ピルグもコルチャックのような若さで押す歌い方ではないので、ちょっとオネーギンとタチヤーナみたいな感じもしましたし、そこを嫌った方もいるでしょう。でも、3幕目の「手紙の場」での長大な独唱は、まさに魂をゆさぶるような美しさがありました。ここを聴いただけでも、この日初台に来た甲斐あり。

 前述のコルチャック、2016年に新国立でウェルテルを歌い、大喝采を浴びました。この印象があまりに強く、それを知っている人には、今回のピルグはやや物足りない。いや、歌手としての出来には大満足なのですが、役の性格作りがちょっと中途半端なんです。コルチャックのように純真で、子供っぽいとまで言えそうなウェルテルと、カウフマンのような成熟したストーカーのようなウェルテルの間で、ややノーブルな感じに過ぎた感じがありました。しかし、藤村とのバランスはとても良かったです。そして「オシアンの歌」は素晴らしかった。Bravo!!! 残念なのは、歌が素晴らし過ぎたせいか、3階の観客の一人がまだ途中なのに拍手をしてしまい、ピルグに手で制止されていたこと。この人かどうかわかりませんが、この日は3階あたりから、不要な拍手がちょっと多かったですね。

 この公演は、ピルグ以外の歌手は全員日本人でしたが、実にクォリティが高かったです。ソフィーの幸田浩子も良かったです。彼女は台本での15歳という年齢にぴったりで、可愛らしいコロラトゥーラを聴かせてくれました。演技も秀逸。そしてアルベールの黒田博、このオペラでは憎まれ役になるのですが、声にその演技が籠もっていて秀逸でした。嬉しかったのは、研修所から応援している、糸賀修平(シュミット)と駒田敏章(ジョアン)が、存在感のある歌声を聞かせてくれたこと。糸賀の特徴のある甘い声を僕は大好きで、いつか新国立が初めて、ベッリーニをやってくれたら、この人のテノールを聴きたいなぁと思っています。(夢遊病あたりで。。。)

 指揮のポール・ダニエルは初めて聴きました。可も無く不可もなくという感じでしょうか?歌手によりそうようなところはとても良いのですが、序奏や間奏で、ところどころ音の立ち上がりが合わなかったり、なんとなく雑然として聞こえて、音楽の中に入り込むのが難しかったです。

 特筆したいのは、舞台美術の素晴らしさ、ニコラ・ジョエルの演出は2016年の再演ですが、特に4幕目の書斎の場の美しさ、一面の本棚と高い窓(おそらく)から床にこぼれる日の光の中で、ウェルテルが息絶えて行くシーンは本当に美しいものでした。ばらの騎士や、影のない女でも同じような手法が使われていましたが、新国立劇場の照明の素晴らしさは、世界に誇れるものだと思います。照明で泣かされるのは、この劇場だけです!

帰りに、チケット売り場で、まだ取っていなかった5月のドン・ジョヴァンニの席を取りました。その前に4月の「フィレンツェの悲劇、ジャンニ・スキッキ」のダブルビルです。

指揮:ポール・ダニエル
演出:ニコラ・ジョエル
美術:エマニュエル・ファーヴル
衣裳:カティア・デュフロ
照明:ヴィニチオ・ケリ
再演演出:菊池裕美子
舞台監督:大仁田雅彦

ウェルテル:サイミール・ピルグ
シャルロット:藤村実穂子
アルベール:黒田 博
ソフィー:幸田浩子
大法官:伊藤貴之
シュミット:糸賀修平
ジョアン:駒田敏章
合唱指揮:三澤洋史
合唱:新国立劇場合唱団
児童合唱:多摩ファミリーシンガーズ
管弦楽:東京交響楽団

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