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プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

「二人のフォスカリ」と「ルイーザ・ミレル」

 レオ・ヌッチの引退というニュースを聞いて、すっかり落胆してしまい、パルマで聴いた2つのオペラの感想を書いていませんでした。それにしても、今回聴いたGALAが最後になったのかなぁ。

「二人のフォスカリ」を生で見るの初めてです。Tutto VerdiのBlueRayでは何度も見ていたので、この演目もヌッチのイメージが出来上がっているのですが、今回は、今、人気上昇中のウラジミール・ストヤノフが老フォスカリ、日本でもお馴染みのステファン・ポップ(今も来日中のはず)がヤコポ・フォスカリでした。会場は、パルマ王立劇場。海外の劇場の中では、一番回数多く訪れているところで、きれいだし、大きさも中くらい(1500名)で丁度良く、来ている人も適度にドレッシー、適度に老若男女入り交じり、そして、バーも充実しています。(休憩が短いのですが。)

 この公演、指揮がとても良かったです。パオロ・アリバベーニという指揮者は初めてでしたが、全体にレガートで、高まるところをギューッと締めるという感じの指揮で、メリハリがついていて良かったです。歌手ではなんと言ってもストヤノフが、気品があり、老フォスカリの悲しさがそのまま声になったような表現力とあいまって、舞台を支配していました。このくらいの力量があると、ヌッチのイメージも消えますね。ステファン・ポップも非常に良かったのですが、声量がややあり過ぎて、ピアニシモを多用するストヤノフとの対比がちょっと気になりました。ヒロインのルクレツィアを歌ったマリア・カザルヴァは初めて聴きますが、終始叫びまくっていたイメージ。それと、ブレスの音がきつくて気になりました。あまり評価できません。

 演出、舞台美術は秀逸でした。舞台の奥がアーチ状の壁になっているのですが、それがすだれのような板で構成されていて、そこにモノクロ10人委員会のメンバーの顔が出たり、幾何学的な模様が出たり、単なる素通しになったりするのが、とてもシンプルで洒落ているのです。ヤコポが投獄されているところは天井から鎖が何本も下がってきて表現します。歌手の衣装は時代物ですが、舞台のほうは現代っぽい。お金はかけないが、ドイツの歌劇場みたいな、素っ気なく、かつ難解なものとは違って、好感が持てました。t05_c.jpg  フォスカリのステージ(後方の壁上部にグラフィックが出る)

 この演目、日本でついぞ上演された記憶がないのですが、まあ、あまりにも地味すぎるのでしょう。地味と言えばシモン・ボッカネグラも地味なのですが、フォスカリは地味な上に、役柄の持っている憎しみや悲しみの必然性が良くわからないのです。シモンでは、なぜ、フィエスコがシモンを憎んでいるのかが、25年前のプロローグから良くわかるのですが、フォスカリの場合はロレダーノがなぜフォスカリ一族を滅亡させるまで恨んでいたのかが明確ではありません。

 とは言え、美しいオペラでした。

翌日は、場所を変え、修復中の市内中心部にある、聖フランチェスコ教会を会場にした「ルイーザ・ミレル(ミラー)」でした。僕たちの泊まったフラットから歩いて3分、休憩時にトイレに戻れるくらいの距離で便利でした。教会の内外すべてが足場に覆われており、まったくの建築現場。ここをオペラの舞台にしてしまうなんて、すごいアイデアですね。同じ市内にある、ファルネーゼ劇場を使う手もあったと思うのですが、教会の方が視覚的にも音響的にもインパクトあります。

 この日の指揮はロベルト・アバド。今回のフェスティヴァル・ヴェルディの総監督でもあります。彼の指揮を聴いた人からは、絶賛の声は聞いていなかったので、それほど期待していなかったのですが、なかなか良かったです。オケを強くコントロールするという感じではなく、適宜、比較的自由に泳がせておいて、要所を締める、フォスカリよりももっとゆったりとした感じで、この演目にはあっていました。安心して聴けました。ルイーザのフランチェスカ・ドット。レッジェロなしかし、良く通る声。装飾歌唱も美しく、芝居もなかなか良かったし、満足です。ロドルフォを歌ったアマディ・ラーニャ、父ミラーのフランコ・ヴァッサーロ、ウルムのガブリエレ・サゴナ、伯爵のリカルド・ザネラートと皆、水準以上の歌唱でしたが、この日はフェデリカのマルティナ・ベッリが急に降板し、代役となった歌手(アナウンスだけだったので名前を覚えていません)が、いまひとつでした。アンダーとして良く練習しているのはわかるのですが、何せ声量がなさ過ぎて、他の歌手とのやりとりが厳しかったです。

 演出は、舞台美術に関して言えば120点。教会の石壁と、そこにかけられた足場を有効に利用し、カーテンのない舞台で、幕間の舞台の変換も演出していました。なかなか、こういうのを体験する機会はないと思います。しかし、演出はラストでずっこけました。というのは、最後、死ぬのがルイーザ、ロドルフォ、ウルムの3人だけではなく、残りの出演者全員が死んでしまうのです。ロドルフォが、招待客の入っていない、フェデリカとの結婚式場のテーブルにあるワインカラフェ(20くらいある)すべてに、手に持った小瓶から毒薬を入れてしまい、最後はこのワインで全員乾杯でした。これでは、ストーリーも代わってしまいます。ボルジア家みたいですね。そこまでは、演出とても良かっただけに、ちょっと気が抜けてしまいました。

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フランチェスコ教会

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ルイーザ・ミレル カーテン(?)コール

 しかし、数年前にはその年の5月になっても、演目どころか開催も危ぶまれていたA「フェスティヴァル・ヴェルディ」、今年はすでに来年の演目が発表されていたのにはびっくりしました。強力なスポンサーが付いたのでしょうか?来年は、王立劇場で「イ・ロンバルディ」、「エルナーニ」、ブッセートで「リゴレット」、フランチェスコ教会(まだ修復中か?)で「マクベス」です。詳細は1月末に発表のようですが、期待できますね。
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