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プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

「椿姫」新国立劇場

 5日のマチネに行って来ました。ヴァンサン・プサールの演出のこの演目も今回でたしか3回目になるかと思います。全回見ていますが、今回は舞台美術がだいぶ変わったようです。特に1幕目のヴィオレッタの夜会のシーンでは、ブルーの床と壁が一体化して、不思議な3次元空間を作っていました。全幕を通じて鏡をうまく使い、非常に美しい舞台を構成していました。3幕目のヴィオレッタの病床の舞台は、賛否両論あるようですが、紗幕のようなカーテンがヴィオレッタと他の人々を隔てており、ここで既にヴィオレッタが亡くなっていることを明示しています。つまりカーテンの向こう側は、「この世」で、手前側のヴィオレッタのいる方は「あの世」なのです。このカーテンも美しかったです。ただ、今までよりもちょっと生地が厚くなったような気がして、多少声の通りが悪くなっていたかもしれません。いずれにしろ、ヴィオレッタはこの時点でもうこの世から去っているのです。ですからラストで立ったまま倒れずに、両手を挙げて暗転になるのだと思います。

 また、この幕でベッドの代わりをするピアノは、1幕目から舞台の中央で存在を誇示するようになっています。これも賛否両論(というよりは「否」の意見のほうが多いようですが…)あるようですが、僕はヴィオレッタのモデルになった、マリー・デュプレシ(アルフォンシーヌ・プレシ)の最愛の恋人だったフランツ・リストを暗示しているのだと思います。(リストは当時、超絶技巧ピアニストとして名を馳せていた)リストは、マリーを残して旅に発ち、結局戻ってこなかったのです。しかし、この演出が僕の考える通りだとしても、少しプサールの自己満足的な表現かもしれませんが。。。

 タイトルロールのギリシャ人ソプラノ、ミルト・パパタナシュはヴィジュアル的には、文句のないヴィオレッタです。この役でデビューをし、得意としているそうです。歌唱力もあり、感情表現も上手いのですが、やや気持ちが入りすぎていて、聴いているほうが付いていけないところがありました。アルフレードやジェルモンとの2重唱でも、テンションの違いが大きかったと思います。もっとも、これはアルフレードの場合は、ドミニク・チェネスの力不足も大きいでしょう。すぐに息が上がってしまうようで、音程もちょっと怪しい。乾杯の歌は、最初の出だしで「やらかして」いました。ジェルモンの須藤慎吾は素晴らしい歌唱で、この日最も多く拍手をもらっていました。いわゆる高めのヴェルディバリトンではなく、低めで立派に歌っていましたが、威厳がありすぎて、2幕目第一場のヴィオレッタとの2重唱も、序々に、同じメロディーを歌って徐々に感情が一体化していく、その一番の聴き所の印象が薄いのです。ジェルモンには彼なりの苦闘があると思うのですが、そういうところが余り感じられずに、むしろすっかり割り切ってしまっているという感じがしました。

 それでも、3幕目のパパタナシュのアリア「道を踏み外した女」は素晴らしい出来でしたし、二重唱の「パリを離れて」も心を打つものがありました。

 指揮のレプシッチは新国立初登場。「破綻の無い指揮」という感じで終始していましたが、二幕目、三幕目で、舞台が盛り上がるところで、オケのトーンが落ちてしまい、「おやっ?」と思うことがありました。あくまでも、歌手を浮き出させようとする主旨なのでしょうか?

 色々とネガティブなことを書きましたが、美しい舞台と充分な水準の歌手で、楽しめた公演でした。

 なお、幕間に、1階のロビーのヴェルディ協会のブースに立っておりました。お立ち寄り頂いた皆様に感謝致します。ヴェルディ協会では、来年2月1日にサントリーホールブルーローズで「創立20周年ガラコンサート」を開催します。どうぞ、皆様お越しくださいませ。

指揮:イヴァン・レプシッチ
演出:ヴァンサン・プサール

ヴィオレッタ:ミルト・パパタナシュ
アルフレード:ドミニク・チェネス
ジェルモン:須藤慎吾
フローラ:小林由佳
アンニーナ:増田弥生
新国立劇場合唱団、東京フィルハーモニー管弦楽団
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