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プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

フローレス来日!

 12月10日、オペラシティで行われたファン・ディエゴ・フローレスの公演に行って来ました。生のフローレスを聴くのは3回目、過去2回は海外でした。スカラ座の“オルフェオとエウリディーチェ”、METでの“ラ・トラヴィアータ”、両方とも本当に素晴らしかったので、今回の来日公演は期待をしていましたが、期待をはるかに超えたパフォーマンスでした。

 フローレスと言えば、ペーザロでデビューしてその後も長いこと出演していたので、ロッシーニ歌いというイメージがありますが、この日の曲目にはロッシーニは1曲もなく、ベッリーニに始まり、ドニゼッティ、ヴェルディ、レハール、マスネ、ビゼー、プッチーニと、時代を追って、ベルカントからヴェリズモ方面に上ってくるメニューになっていました。彼の声は、全く滞りの無い精密機器が見事にチューニングされたような、「完璧な声」と言えるでしょう。低音から高音まで、一声目でまったくブレなく音程が決まります。ハイC(3点C)でも持ち上げるということが全然無いので、ハイCに聞こえないのです。この日のハイCは、ヴェルディの2曲、“ラ・トラヴィアータ”の“わが後悔(o mio rimorso)”とアンコール最終曲”リゴレット“の”女心の歌(la donna è mobile)”の最後で聴けました。”o mio rimorso”は最後の”lavero♫”の繰り返しを2回、空白にしてピアノに委ね、その後、スクッとハイCが立ち上がるというコンサートバージョン。背中がゾクッとしました。METで聴いた時は、ヴィオレッタがダムラウだったのですが、対するアルフレードがあんなに「知的」に見えたことはありません。だいたい、アルフレードは、軟弱か未熟成、あるいはアントニオ・ポーリのように「可哀そう」という感じになるのですが、フローレスだとインテリジェンスに溢れた美青年になってしまいます。
 先週、新国立で“ラ・トラヴィアータ”を見たばかりなので、そっちに話がいってしましましたが、この日のコンサートはベッリーニの小品から始まりました。まずは喉をならすという感じ。そして、1曲ピアノのソロが入って、ドニゼッティが2曲。”人知れぬ涙“も素晴らしかったですが、エドゥガルドの「我が祖先の墓よ」は1曲で、”ランメルモールのルチア“のオペラの世界に引き込まれてしまいました。そしてヴェルディは、トラヴィアータの前に珍しい”アッティラ“からフォレスト(だと思いました)のアリア「おお悲しいことよ!」は、初期のヴェルディの軽さをノーブルな声で表現して、これも素晴らしいものでした。
 長めの休憩の後は、レハール、マスネ、ビゼー、プッチーニと続きました。最後にプッチーニを持ってきたことで、これからこの作曲家の作品を歌っていくのかなと思わされました。7時に始まって8時45分くらいで、全曲終了。ところが、この後のアンコールが凄かったのです。海外でフローレスのリサイタルを聴いた人から、アンコールは「フローレス歌謡ショ−」みたいになると聴いていましたが、その通り。第3部が始まりました。ギターを持って登場すると、最近レコーディングして発売された新CD“ベサメ・ムーチョ〜ラテンアルバム”から4曲連続で歌いました。ギターも上手い!それもそのはず、彼は、10代の頃はもともと出身国のペルーでシンガーソングライターとして、ギター片手にライブをしていたそうです。そして、鳴り止まぬ拍手に応えて、さらにアンコールは続き、“グラナダ”、“誰も寝てはならぬ”、“女心の歌”と続きました。個人的には、フローレスにヴェリズモまで行ってほしくはないですが、プッチーニも良かったですね。ここ10年で序々に声が重くなって来ているので、歌う曲も変わってきたのだと思います。今は、声に芯があって、“誰も寝て葉ならぬ”のようなずっしりとした曲もこなします。フローレスの声をポルシェの6気筒対向エンジンの音、と言った人がいましたが、今や12気筒エンジンのようです。

 ひとつ残念だったのは、かなり空席が目立ったこと。特に1階の後方と2階が空いていました。やはり、ピアノ伴奏のリサイタルとしては高めの料金が響いたのでしょうか?これだけ素晴らしい公演なのに、ちょっと残念な気がしました。
 さて、次にフローレスを聴けるのは、どこででしょうか?“ウェルテル”なんか聴きたいですよねー。

下に曲目とアンコール曲目の手書きパネルの写真を付けます。
thIMG_5785.jpg

・ベッリーニ:「お行き、幸せなバラよ」
  ”Vanne, o rosa fortunata” (Bellini)

・ベッリーニ:「喜ばせてあげて」
  ”Ma rendi pur contento” (Bellini)

・ベッリーニ:ラルゴと主題 ヘ短調(ピアノ・ソロ)
  Largo e Tema in Fa Minore per Pianoforte solo (Bellini)

・ドニゼッティ:オペラ《愛の妙薬》より「人知れぬ涙」
  “Una furtiva lagrima”, from L’elisir d’amore (Donizetti)

・ドニゼッティ:オペラ《ランメルモールのルチア》より
「わが祖先の墓よ……やがてこの世に別れを告げよう」
  “Tombe degli avi miei… Fra poco a me ricovero”, from Lucia di Lammermoor (Donizetti)

・ヴェルディ:歌のないロマンツァ ヘ長調(ピアノ・ソロ)
  Romanza senza parole in Fa Maggiore per pianoforte solo (Verdi)

・ヴェルディ:オペラ《アッティラ》より「おお、悲しいことよ!でも私は生きていた」
  “Oh dolore! Ed io vivea”, from Attila (Verdi)

・ヴェルディ:オペラ《ラ・トラヴィアータ(椿姫)》より
「あの人から遠く離れて…燃える心を…おお、なんたる恥辱」
  “Lunge da lei… De’miei bollenti spiriti… O mio rimorso” , from La traviata (Verdi)

・レハール:オペレッタ《微笑みの国》より「君はわが心のすべて」
  “Dein ist mein ganzes Herz”, from Das Land des Lächelns (Lehár)

・レハール:オペレッタ《パガニーニ》より「女性へのキスは喜んで」
  “Gern hab’ich die Frau’n geküsst”, from Paganini (Lehár)

・レハール:オペレッタ《ジュディッタ》より「友よ、人生は活きる価値がある」
  “Freunde, das Leben ist Lebenswert”, from Giuditta (Lehár)

・ドニゼッティ:ワルツ ハ長調(ピアノ・ソロ)
  Valzer in Do Maggiore per pianoforte (Donizetti)

・マスネ:オペラ《ウェルテル》より「春風よ、なぜ私を目覚めさせるのか」
  “Pourquoi me réveiller”, from Werther (Massenet)

・ビゼー:オペラ《カルメン》より「お前の投げたこの花を」(花の歌)
  “La fleur que tu m’avais jetée”, from Carmen (Bizet)

・マスネ:オペラ《タイース》から 瞑想曲
  “Meditation from Thais (Massenet)

・プッチーニ:オペラ《ラ・ボエーム》より「冷たい手を」
  “Che gelida manina”, from Labohéme (Puccini)
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