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プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

セビリアの理髪師@新国立劇場

 今年2回目の新国立劇場は、お馴染みの「セビリアの理髪師」。ヨーゼフ・ケップリンガーというオーストリアの演出家になるこのプロダクションは、2005年の初演以来、既に4回目の公演。僕自身も3回目の観劇です。廻り舞台にドールハウスのように組み立てられた巨大なバルトロの家(3階建て)の中と外で、せわしなく動き廻る歌手達の演出が、音楽を聴くのを邪魔するという意見を良く聴きます。僕も最初に聴いた時は、そんな印象を持ちました。が、このオペラブッファを表現するのに、この演出はとてもポジティブに働いてると思います。実際に、こんな生活をしていた人達のドラマなんだと思うと、歌っていない時の動きも面白みがあります。例えば、ロジーナが自分の部屋で、エクササイズをけっこう激しくやっているところ、なんとボクササイズまでやっています。積極的で明るい彼女の性格が良くわかります。バルトロの部屋にある骸骨の標本見本も面白いですね。まあ、3回同じプロダクションを見ているので、こちらにも余裕もあると言えるのですが、双眼鏡で色々と見てしまいました。

 歌手は、非常に高いレベルで、非の打ち所が無いという感じ。一番感嘆したのは、アルマヴィーヴァ伯爵を歌ったアメリカ人のルネ・バルベラ。2幕目最後の大アリア「もう逆らうのをやめろ」は素晴らしかったですね。高音がちょっと鼻に掛かって、しかし上質な白ワイン(軽めの)のような味わいのある声で難しい装飾歌唱を軽々とこなしていく。いや、本当に良かったです。過去の公演では2012年には、この大アリアが省略されていてがっかりした記憶があります。もっとも、この大アリア、最近になって復活してきて良く歌われるようになってきましたが、5-6年前までは、普通に切り取られていることが多かったのです。そして、フィガロのフランス人、フローリアン・センペイも、過去に聴いたフィガロの中でもベストの出来。奥行きと輝きのある声は、一幕目の「街の何でも屋」からエンジン全開でした。そして、ロジーナの脇園彩もベリッシマ!中低音から高音まで、しっかりと決まる音程。魔法のようなアジリタ。Una Voce Poco Faは、今まで聴いたものの中でもバルトリにならぶ凄いものでした。昨年のドンナ・エルヴィーラも素晴らしかったし、来年はケルビーノを歌ってくれるし、海外で活躍している日本人が逆輸入で来てくれるの、とても嬉しいです。

 その他、バルトロのパオロ・ボルドーニャ、ドン・バジリオのマルコ・スポッティも良かったです。ベルタの加納悦子は演技もなかなかでしたが、2幕目の「年寄りは妻を求め」のカヴァレッタ(?)が特筆もので良かったです。脇役が良いと、本当に舞台が締まります。これほど、歌手陣が充実したロッシーニを聴くのは、2015年、アムステルダムで聴いた「ランスへの旅」以来でしょうか? それだけに、新国立でもランスやウィリアムテル、湖上の美人などを新作としてやってほしい気持ちが募ります。

 指揮者のアントネッロ・アルマンディは初めて聴きました。序曲でいきなり、ホルンが「プハ〜」とやらかしてしまって、これはちょっと残念。高まっていた気持ちに水をあびせられた感じです。それ以外は、良かったと思います。ただ、なんか、響きが固い感じがします。ロッシーニらしい、ゆらめくような軽さが充分に出ていない気がしました。

 それにしても、満足なセヴィリアでした。今週は、このあと、東フィルのカルメン、二期会の椿姫と週3回のオペラウィークです。体調を整えて臨みます。

指揮:アントネッロ・アッレマンディ
演出:ヨーゼフ・E.ケップリンガー
アルマヴィーヴァ伯爵:ルネ・バルベラ
ロジーナ:脇園 彩
バルトロ:パオロ・ボルドーニャ
フィガロ:フローリアン・センペイ
ドン・バジリオ:マルコ・スポッティ
ベルタ:加納悦子
フィオレッロ:吉川健一
隊長:木幡雅志
アンブロージオ:古川和彦
管弦楽:東京交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団
チェンバロ:小埜寺美樹

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