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プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

「カルメン」東フィル定期公演

 2月19日、東京フィルハーモニーの定期公演会でビゼーのカルメンが演奏会形式で上演されました。世界の歌劇場で一番演奏されることの多い演目は、「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」で、次がこの「カルメン」だそうですが、僕は、「カルメン」はまだ4回目です。前回は2009年なので、本当に久しぶり。

 この日は、なんと言ってもマエストロ チョン・ミョンフンの指揮が素晴らしかったです。この熱いオペラを、情熱的に、しかし実に知的に響かせていました。今まで聴いたカルメンの音楽が、どちらかというと「ドンシャリ」的になってしまったことが多かった(それがスコアの指示なのかもしれませんが)ので、ミョンフンのふくよかにふくらませるような音に感動しました。また、指揮の姿もかっこいいですよねー。この前ミョンフンを聴いたのは、去年のスカラ座での「シモン・ボッカネグラ」でしたが、これも凄く良かったのですが、彼のスタイルには「カルメン」の方が合うようです。

 最近のオペラの演奏会形式は、ただ、立って前を向いて歌うというのではなく、かなり演技も付けてくれるので、聴いていてもオペラの中に入り込みやすいです。ドン・ホセ役のキム・アルフレードには、やられましたねー。ともすれば、平板のようになりがちなこの役で、素晴らしい感情表現を出していました。かすれるような声まで出して、破綻が無い。カルメンを聴いて、ドン・ホセの心の内側、その苦しみが痛いほどわかったのは初めてです。この人で、ヴェルディを聴いたらいいだろうなぁ、とも思いました。

 そして、ミカエラ役のソプラノのアンドレア・キャロルもとても良かったです。プログラムに「豊かで暗い低音域ときらめく高音域」と書いてありましたが、まったくその通り。中低音の歌唱の多いこの役を、実に存在感のあるものにしていました。アジリタも上手そう。「リゴレット」のジルダや「ドン・パスクァーレ」のノリーナも歌っているそうです。聴いてみたいなぁ。

 タイトルロールのイタリア人、マリーナ・コンパラートは、カルメンを得意としているだけあって、余裕綽々の歌唱。低音から高音まで輝くような声です。ただ、中低音部では、もう少しドスの効いたところがあっても良かったかと思います。

 もう一人の韓国人、エスカミーリョ役のバリトン、チェ・ビョンヒョクも立派な声で良かったのですが、ちょっと声を作っている感があり、声の厚みを感じませんでした。やや一本調子だったかなとも思います。この点、山賊の親玉のダンカイロを歌った、上江隼人のほうが、レチタティーヴォの部分も入れて、実に表現力のある歌唱をしていました。Bravoです。上江は二期会から藤原歌劇団に最近移ったのですが、引っ張りだこですね。
 その他の日本人もすごい豪華キャスト、モラレスの青山貴、メルセデスの山下牧子など、多分、主役級のアンダーになっているのではないかと思いました。これだけの歌手を世界と日本から集めたのも、マエストロの力があってのことでしょう。

 ちなみに、この日の公演は、レチタティーヴォがちょっと省略されながら入った、コミックとグランドオペラの折衷版でした。僕はレチタティーヴォ版が好きなので、この点でも満足です。演奏会形式ではレチタティーヴォは省略されるかと思っていましたので。

 東フィルではシーズンに一回程度、演奏会形式のオペラを入れます。去年はフィデリオ(これもチョン・ミョンフン指揮)でした。いつも非常にクォリティの高い公演ですが、定期会員だとS席で前から3列目、¥6,300-という超リーズナブルなチケットプライスです。

 次の東フィルの公演は3月16日、プレトニョフ指揮でスメタナの「我が祖国」全曲です。これも楽しみです。

カルメン(メゾ・ソプラノ):マリーナ・コンパラート
ドン・ホセ(テノール):キム・アルフレード
エスカミーリョ(バリトン):チェ・ビョンヒョク
ミカエラ(ソプラノ):アンドレア・キャロル
スニガ(バス):伊藤貴之
モラレス(バリトン):青山貴
ダンカイロ(バリトン):上江隼人
レメンダード(テノール):清水徹太郎
フラスキータ(ソプラノ):伊藤晴
メルセデス(メゾ・ソプラノ):山下牧子
合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:冨平恭平)
児童合唱:杉並児童合唱団(児童合唱指揮:津嶋麻子)

指揮:チョン・ミョンフン
東京フィルハーモニー交響楽団
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