プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

エトワール・ガラ2016

 さて、楽しみにしていたオペラ座エトワールの来日です。5日間で5公演、Aプロを8月7日(日)とBプロを8月5日(金)と両方見て来ました。チケットを取った時には、エルヴェ・モローが来ることになっていたのですが、怪我のために降板。モローは怪我が多いダンサーですね。昨年のオーレリ・デュポンのアデュー公演のマノンも怪我で降板しました。今のところ、モローを見られた率は5割ほど。

 モローの代わりに、バンジャマン・ペッシュが目玉になりました。ペッシュ、今年の2月にオペラ座を引退したとのこと、プログラムに書いてありましたが、42歳で定年だったんですね。

 今回、個人的に注目していたのは、2014年にエトワールになったアマンディーヌ・アルビッソン。女性エトワールとしてはかなり大柄です。Bプロのローラン・プティの“ランデブー”、はとても良かったです。ペッシュと切れのある動きで、しかも洒落ている。長い手足を生かしてダイナミックでした。Aプロの“アザーダンス”もマチュー・ガニオとのコンビがとても良く、クラシックの技術も光っていました。しかし、一人で踊った「それでも地球は回る」は、大きな体を持てあましている感じがありました。ちょっと肉感的すぎるんですよね。エトワールとしての「凄み」が出てくるのはこれからでしょう。それにしても、あと3−4kg体を絞っても良いのではと感じました。

 その点、その「凄み」が出てきたのはドロテ・ジルベールとマチュー・ガニオだと思いました。ドロテはもともとやせていますが、筋肉もついてきて、手足の動きが速い!関節がはずれるんじゃないかというくらい動きます。それでいながら、ルシア・ラッカラみたいなサイボーグにはならず、あくまで優雅で“可愛い!”。デュポンや、ルテステュとは全然違うんですが、「輝くエトワール」という貫禄が出てきました。Aプロの“チャイコフスキー パ・ド・ドウ“は全演目の中で最も良かったです。余裕を持って超絶テクニックを使っているのが凄いですね。

一方のマチュー・ガニオもようやく30代になって、落ち着きが出てきていい感じになってきました。前は、なんか浮いている感じがあったのです。パートナーへの気遣いなどの動作が実にノーブルです。アルビッソンなどは、ガニオに生かされている感じです。

 今回はスジェのジェルマン・ルーヴェや、プルミエールのユーゴ・マルシャン、レオノール・ボラックなどの若手も参加していました。この中では、マルシャンの優雅さが光っていました。パートナー(チャイコフスキー パ・ド・ドウではジルベール、シルヴィアではローラ・エケ)への手の使い方が実に美しい。

 バンジャマン・ペッシュ、エトワールとしてはあまり陽の当たる環境にはいなかったような気がします。けっこう「濃い」顔と動きをしている割には、それがぴったりな踊りを見たことが無いような気がします。ジル・ロマンなんかより、ベジャールを踊ったら良いような感じがしますね。この日のル・パルクの“解放のパ・ド・ドゥ”も悪くはないのですが、全盛期のルグリや、マラーホフに比べるとなにか「格調」に欠ける、、、と言ってはファンの方にはちょっと怒られそうですが、、、そんな感じがしました。

 来年は、デュポンが2度来日してくれるようです。それで2月にはボレロを踊ってくれる! 大ニュースです!絶対見に行きます。

【Aプログラム】
『瀕死の白鳥』
振付:ミハイル・フォーキン
音楽:カミーユ・サン=サーンス
出演:ドロテ・ジルベール

『グラン・パ・クラシック』
振付:ヴィクトル・グゾフスキー
音楽:フランソワ・オーベール
出演:ローラ・エケ&ジェルマン・ルーヴェ

『シンデレラ・ストーリー』
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
出演:シルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコ

『クローサー』 *日本初演 
振付:バンジャマン・ミルピエ
音楽:フィリップ・グラス
出演:エレオノラ・アバニャート&オードリック・ベザール
ピアノ:久山亮子

『三人姉妹』 
振付:ケネス・マクミラン
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
出演:アマンディーヌ・アルビッソン&オードリック・ベザール
ピアノ:久山亮子

『カラヴァッジョ』
振付:マウロ・ビゴンゼッティ 
音楽:ブルーノ・モレッティ(クラウディオ・モンテヴェルディの原曲に基づく)
出演:レオノール・ボラック&マチュー・ガニオ

『くるみ割り人形』より
振付:ルドルフ・ヌレエフ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
出演:レオノール・ボラック&ジェルマン・ルーヴェ

『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
出演:ドロテ・ジルベール&ユーゴ・マルシャン

『感覚の解剖学』
振付:ウェイン・マクレガー
音楽:マーク=アンソニー・タネジ
出演:ローラ・エケ&ユーゴ・マルシャン

『スターバト・マーテル』
振付:バンジャマン・ペッシュ
音楽:アントニオ・ヴィヴァルディ
出演:エレオノラ・アバニャート&バンジャマン・ペッシュ

『ル・パルク』より“解放のパ・ド・ドゥ”
振付:アンジュラン・プレルジョカージュ
音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
出演:エレオノラ・アバニャート&バンジャマン・ペッシュ

『Sanzaru』 *日本初演
振付:ティアゴ・ボァディン
音楽:フィリップ・グラス
出演:シルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコ

『アザーダンス』 
振付:ジェローム・ロビンズ
音楽:フレデリック・ショパン
出演:アマンディーヌ・アルビッソン&マチュー・ガニオ
ピアノ:久山亮子


【Bプログラム】
『それでも地球は回る』 *女性版世界初演
振付:ジョルジオ・マンチーニ
音楽:アントニオ・ヴィヴァルディ
出演:アマンディーヌ・アルビッソン

『病める薔薇』
振付:ローラン・プティ
音楽:グスタフ・マーラー
出演:エレオノラ・アバニャート&オードリック・ベザール

『With a Chance of Rain』 *日本初演
振付:リアム・スカーレット
音楽:セルゲイ・ラフマニノフ
出演:ローラ・エケ&オードリック・ベザール、ドロテ・ジルベール&マチュー・ガニオ
ピアノ:久山亮子

『ラ・シルフィード』より
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
音楽:ヘルマン・レーヴェンショルド
出演:レオノール・ボラック&ジェルマン・ルーヴェ

『See』 *日本初演
振付:大石裕香
音楽:アルヴォ・ペルト
出演:シルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコ

『人魚姫』
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:レーラ・アウエルバッハ
出演:シルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコ

『ランデヴー』
振付:ローラン・プティ
音楽:ジョゼフ・コスマ
出演:アマンディーヌ・アルビッソン&バンジャマン・ペッシュ

『ロミオとジュリエット』第1幕より“マドリガル” “バルコニーのパ・ド・ドゥ”
            第3幕より“寝室のパ・ド・ドゥ”
振付:ルドルフ・ヌレエフ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
出演:レオノール・ボラック&ジェルマン・ルーヴェ(マドリガル)、
   ドロテ・ジルベール&ユーゴ・マルシャン(バルコニーのパ・ド・ドゥ)
   アマンディーヌ・アルビッソン&マチュー・ガニオ(寝室のパ・ド・ドゥ)

『シルヴィア パ・ド・ドゥ』
振付:ジョージ・バランシン
音楽:レオ・ドリーブ
出演:ローラ・エケ&ユーゴ・マルシャン

『ル・パルク』より“解放のパ・ド・ドゥ”
振付:アンジュラン・プレルジョカージュ
音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
出演:エレオノラ・アバニャート&バンジャマン・ペッシュ

≪パリ・オペラ座バレエ エトワール≫
エレオノラ・アバニャート
アマンディーヌ・アルビッソン
ドロテ・ジルベール
ローラ・エケ
バンジャマン・ペッシュ 
マチュー・ガニオ
≪パリ・オペラ座バレエ プルミエ・ダンスール≫ 
レオノール・ボラック
オードリック・ベザール
ユーゴ・マルシャン
≪パリ・オペラ座バレエ スジェ≫
ジェルマン・ルーヴェ
≪ハンブルク・バレエ プリンシパル≫ 
シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ

久山亮子(パリ・オペラ座バレエ 専属ピアニスト)


  

オールスター・バレエ・ガラ

 これも少し前の公演になってしまいましたが、7月27日に東京文化会館で行われた”バレエの祭典“に行ってきました。毎年、7-8月はバレエ観劇が多いですね。

 今回、ガツンと来たのは、何と言ってもザハロワ。筋力が違う、パワーが違うという感じで、跳躍も開脚も静止もビタッと決まっていました。この人見るたびに筋肉質になってきている感じがします。それでいながら、優美な情感を振りまいています。

 それと、ジリアン・マーフィー良かったですね。「リーズの結婚」は大好きな演目ですが、柔らかい踊りで魅了されました。手の先まで本当に感情のこもった動き。この人素晴らしいですね。今迄あまり気がつかなかった。(迂闊!)

 そして、個人的にはいつも「瀕死の白鳥」しか見ていないイメージのあるウリヤーナ・ロパートキナのコンテンポラリー、表現力が素晴らしいです。以前、世界バレエでタマラ・ロホのコンテンポラリー(モダンでしょうか?)を見た時は、はあまり良いと思いませんでしたが、ロパートキナは素晴らしい。そして、あまりメイクをしていないと若い!

男性ダンサーでは、マルセロ・ゴメスに注目していましたが、やや力を抜いた感じがしました。特に最後の「眠りの森の美女」のパ・ド・ドゥはどうも感心しませんでした。"王子感”ではホセ・カレーニョを継いでいると思いますが。。。

しかし、やっぱりAプロも行くべきでした。特にアレクサンドラ・フェッリの踊りを安藤赴美子さんのフォーレのレクイエムで見られるというのは、はずせなかったなぁ。残念。。それにしても、これだけのダンサーを集めたジャパンアーツさんに拍手!!


今週は、オペラ座エトワールの来日です。これはAプロ、Bプロともチケット取りました

この日のプログラムB
「ラプソディ」(振付:F.アシュトン) アレッサンドラ・フェリ、エルマン・コルネホ [ピアノ:中野翔太]
「白鳥の湖」より第2幕アダージォ(振付:M.プティパ) ニーナ・アナニアシヴィリ、マルセロ・ゴメス
「Fragments of one's Biography」より(振付:V.ワシーリエフ) ウリヤーナ・ロパートキナ、アンドレイ・エルマコフ
「ジゼル」(振付:M.プティパ) スヴェトラーナ・ザハーロワ、ミハイル・ロブーヒン
「リーズの結婚」(振付:F.アシュトン) ジリアン・マーフィー、マチアス・エイマン
[休憩]
「プレリュード」(振付:N.カサトキナ) ウリヤーナ・ロパートキナ、アンドレイ・エルマコフ
「フー・ケアーズ?」より(振付:G.バランシン) ジリアン・マーフィー、マチアス・エイマン
「ディスタント・クライズ」(振付: E.リャン) スヴェトラーナ・ザハーロワ、ミハイル・ロブーヒン
「レクリ」(振付:V.チャブキアーニ~ジョージアの民族舞踊に基づく) ニーナ・アナニアシヴィリ
「ル・パルク」(振付:A.プレルジョカージュ) アレッサンドラ・フェリ、エルマン・コルネホ [ピアノ:中野翔太]
「眠りの森の美女」(振付:M.プティパ/A.ラトマンスキー) カッサンドラ・トレナリー、マルセロ・ゴメス


出演者プロフィール
ニーナ・アナニアシヴィリ Nina Ananiashvili(ジョージア国立バレエ)
アレッサンドラ・フェリ Alessandra Ferri(元アメリカン・バレエ・シアター他)
ウリヤーナ・ロパートキナ Ulyana Lopatkina(マリインスキー・バレエ)
ジリアン・マーフィー Gillian Murphy(アメリカン・バレエ・シアター)
カッサンドラ・トレナリー Cassandra Trenary(アメリカン・バレエ・シアター)
スヴェトラーナ・ザハーロワ Svetlana Zakharova(ボリショイ・バレエ)
エルマン・コルネホ Herman Cornejo(アメリカン・バレエ・シアター)
マルセロ・ゴメス Marcelo Gomes(アメリカン・バレエ・シアター)
マチアス・エイマン Mathias Heymann(パリ・オペラ座バレエ)
ミハイル・ロブーヒン Mikhail Lobukhin(ボリショイ・バレエ)
アンドレイ・エルマコフ Andrei Yermakov(マリインスキー・バレエ)

指揮:アレクセイ・バクラン 管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

ラ・シルフィード@新国立

新国立劇場のバレエ、“ラ・シルフィード”、当日券で楽日の公演に駆け込みました。残念ながら1幕1場は間に合わず、2場にジェームスがシルフィードに夢中になってしまうところから鑑賞しました。この演目を全幕で見るのは初めてです。ジェームスがスカーフを持ってシルフィードを追いかける第2幕のパ・ド・ドゥの印象はあるものの、なんとなく地味だなという感じがしていました。それもそのはずで、この1836年にパリのオペラ座で初演をされたのですが、1841年の初演の”ジゼル“とならび、ロマンティックバレエの歴史を開いた作品と言えるのです。ちなみに、ヴェルディが1844年にオペラ化した、ヴィクトル・ユーゴーの戯曲”エルナーニ“は1830年にパリコメディ・フランセーズ劇場で初演されており、これをもって「フランス・ロマン派演劇の創始」と呼び、この戯曲を巡る古典派とロマン派のはげしい攻防が「エルナーニ事件」と呼ばれています。ですので、この”ラ・シルフィード”も当時は相当の話題になったと思います。なにしろ、ロマンバレエの傑作あるいは完成と言われる「白鳥の湖」の初演は、ここから40年たった1877年なのです。

長い丈のチュチュ(これが非常に美しい!)で、フェッテやピロエット、ジャンプもありませんが、実に清らかな流れの踊りに魅了されます。物語も踊りの構成もジゼルに似ていますが、妖精のシルフィードはジゼルと違って最初から登場。この日は小野絢子が小柄な体を大きく使い、初々しい魅力に溢れた動きでジェームス役の福岡雄大を引っ張ります。福岡も夢と現実の間に落ち込んでしまった青年の喜びと苦しみを実に素晴らしく表現していました。このダンサーはどんどん進化していますね。占い師、マッジはこの日演じた本島美和(すごい拍手もらっていました)と高橋一輝のダブルキャスト。男女のダブルキャストということで、高橋も見てみたかったです。

 このバレエ、心に沁みました。いいものを見たなぁという感じ。1場見られなかったし、その前にやったモダンのMen Y Menも見られませんでしたが、C席で舞台全部が見下ろせて、アトレ会員価格4,104円というのは、METのライブビューイングに比べても価値感ありますね。ただ、いつも新国立で素晴らしい指揮でオケを鳴らしてくれるポール・マーフィーではなく、ギャヴィン・サザーランドという若手指揮者だったのですが、指揮もオケもいまいち。4階で見るバレエは音楽にもうっとりしたいものです。

月夜に煌めくエトワール

 だいぶ遅くなってしまいましたが、今年の初芝居は、オペラ座のエトワールとピアノ、バイオリンによる、“STARS in THE MOONLIGHT, 月夜に煌めくエトワール”、BUNKAMURAと愛知芸術劇場の企画による意欲的な公演でした。

エトワールとは、もちろんパリオペラ座のダンサーのトップの階級名です。下からカドリーユ、コリフェ、スジェ、プルミエ・ダンス-ル、エトワールと来ています。今、何人のエトワールがオペラ座にいるか把握していませんが、10人強くらいではないでしょうか?ほんの一握りです。だいたいが30代前半でプルミエ・ダンスールから昇進します。そのダンサーが踊る公演の後にサプライズで昇進を告げられるというのがお決まりのようです。今いるエトワールの中では、今回来日したマチュー・ガニオが11年前20歳の若さで、スジェから飛び級でエトワールに任命され、以来11年の在任というのが一番長いのではないでしょうか?飛び級でエトワールに任命されたのは、過去にドミニク・カルフーニ(マチューの実母)、マニュエル・ルグリ、ローラン・イレールの3人しかいないとプログラムに書いてありました。ギエム、デュポンでさえも飛び級ではなかったのですね。

このマチューとエルヴェ・モロー、そして若手のドロテ・ジルベール、今輝いているエトワールと言っていいと思いますが、この3人が3メキシコ人でヨーロッパで活躍中のピアニスト、ジョルジュ・ヴィラドムスと日本人バイオリニスト三浦文彰と共演するというのが今回の企画。なかなか素晴らしかったです。

プログラムの半分以上が日本初演、あるいは世界初演という意欲的なものでしたが、最初のマスネによるタイスの瞑想曲で始まった“煌めくエトワール”から引き込まれました。ドロテがプルミエだった頃と比べて筋肉がすごくなっているのにびっくり。そして、圧巻だったのは、ジョルジオ・マンチーニの振付の「トリスタンとイゾルデ」からの”愛と死のパ・ド・ドゥ“、これはワーグナーの原曲をそのまま用いたので、ピアノとバイオリンの出番はありませんでしたが、オペラのポネル演出を思わせるような幻想的な世界をマチュー・ガニオとドロテ・ジルベールが作り出していました。

エルヴェ・モローが自らブベニチェクに頼み込んで振付をしてもらったというドビュッシーの「月の光」も妖艶なソロでした。最後にピアノの下に潜り込んで終わるのも印象的。

ただ、全体としてややまだ動きが固い感じがしました。特にトリスタンのところでのリフトや複雑な二人の体のからまり。デュポンとルグリのように、大理石が溶けていくような感じが無いのです。今回、モロー自身が振り付けた“LUNA”(日本初演)とパトリック・バナ”の振付による”失われた楽園“(世界初演)がカットされたのも残念ですが、やはり「初演」ものを詰め込み過ぎて、充分な練習が出来なかったのではという感じがしました。

昨年、オーレリ・デュポンが、一昨年にはニコラ・ル・リッシュ、2013年にはアニエス・ルテステュ、イザベル・シアラヴォラと一時代を築いた大物エトワールが引退し、パリのオペラ座は新時代に入ったと思います。モローももう38歳、若手とは言えませんが、ドロテやマチュー、昨年任命されたばかりのアマンディーヌ・アルビッソンあたりがこれからのオペラ座を担うのだと思います。これからのオペラ座に期待しましょう。ただ、しばらくパリへは行きにくいんですよね。モローのアデューの頃には安全になるでしょうか?

◎『煌めくエトワール』 ※日本初演
音楽:ジュール・マスネ 「タイスの瞑想曲」
振付:エルヴェ・モロー
振付協力:イザベル・シアラヴォラ
バレエ:ドロテ・ジルベール&エルヴェ・モロー
ヴァイオリン:三浦文彰
ピアノ:ジョルジュ・ヴィラドムス

◎イザイ:『無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調“ バラード”』
ヴァイオリン:三浦文彰

◎ポンセ:『メキシカン・バラード』
ピアノ:ジョルジュ・ヴィラドムス

◎『トリスタンとイゾルデ』より”愛の死のパ・ド・ドゥ” ※日本初演
音楽:リヒャルト・ワーグナー
振付:ジョルジオ・マンチーニ
バレエ:ドロテ・ジルベール&マチュー・ガニオ 
※音楽は録音テープを使用

◎『ツクヨミ』 ※世界初演
音楽:アルヴォ・ペルト「アリーナのために」
振付:中村 恩恵
バレエ:エルヴェ・モロー
ピアノ:ジョルジュ・ヴィラドムス
※音楽は録音テープを使用

◎『それでも地球は回る』
音楽:アントニオ・ヴィヴァルディ『バヤゼット』より「私はないがしろにされた妻」
振付:ジョルジオ・マンチーニ
バレエ:マチュー・ガニオ
ヴァイオリン:三浦文彰
ピアノ:ジョルジュ・ヴィラドムス
※マチュー・ガニオのために特別に改訂

◎サン=サーンス:『序奏とロンド・カプリチオーソ』
ヴァイオリン:三浦文彰
ピアノ:ジョルジュ・ヴィラドムス

◎『瀕死の白鳥』
音楽:カミーユ・サン=サーンス「動物の謝肉祭」より第13曲「白鳥」
振付:ミハイル・フォーキン
バレエ:ドロテ・ジルベール
ヴァイオリン:三浦文彰
ピアノ:ジョルジュ・ヴィラドムス

◎リスト:『バラード 第2番 ロ短調』
ピアノ:ジョルジュ・ヴィラドムス

◎『月の光』
音楽:クロード・ドビュッシー
振付:イリ・ブベニチェク
バレエ:エルヴェ・モロー
ピアノ:ジョルジュ・ヴィラドムス

◎スペシャル・カーテンコール
音楽:バート・ハワード(フランク・シナトラ「Fly Me to the Moon」)
出演:全員

“オネーギン“シュツットガルトバレエ団

 オネーギン、オペラでは全幕を見ていますが、実はバレエでは全幕物を見ていなかったのです。で、昨日は、ジョン・クランコの振り付けたオネーギンの「勧進元」であるシュツットガルトバレエ団が引っ越し公演でやって来たと言うので見て来ました。ちなみに、オネーギンの3幕目か1幕目のパ・ド・ドゥは、覚えているだけでも今年8月の世界バレエでこのバレエ団のスターであるフリーデマン・フォーゲルとアリシア・アマトリアンが1幕目のパドドゥを踊ったのを見ていますし、2012年の世界バレエではルグリとマリア・アイシュヴァルトが3幕目のパドドゥを、2007年には「ルグリと仲間達」で、モニカ・ルディエールのものすごいパフォーマンスを見ています。

 昨日のオネーギン役はロマン・ノヴイツキー。ルグリやフォーゲルに比べてやはり存在感がちょっと足りない感じ。このバレエは技術で見せるのではなく、ダンサーがいかに役の情感を出せるかで決まるので、タチヤーナとほぼ同じ男性としては低めの身長というのも不利だったかもしれません。それでも3幕目は見せてくれました。速く、きびきびした動きでノヴイスキーらしさを出し、美しく魅力的になったタチアナへの想いを火花のように散らす踊りにbravoでした。タチヤーナ役の韓国人、ヒョ・ジョン・カンはこの日の白眉!1幕目の幼なさの残る娘から成熟した女性に変わる3幕目の変化を踊りでふんだんに見せてくれました。鏡の向こうに立ったのは、日本人ソリストの森田愛海だったのかもしれません。今回はロミオとジュリエットのジプシーで踊っていたようですが、次に来るときにはプリンシパルになって良い役で踊ってほしいですね。

 このバレエのあらすじは、チャイコフスキーのオペラ“エフゲニー・オネーギン”と殆ど同じです。椿姫のように、最期にアルマン(アルフレード)が立ち会うか、立ち会わないか、というような大きな違いはバレエ版とオペラ版の間にはありません。いずれも美しく悲しい最後ですが、ストーリーを良く考えてみると、実は、昔は冴えなかった女の子が今は人の妻になっていて見違えるほど美しく魅力的なので、よりを戻そうとしたオネーギンが振られるというお話なのです。彼はその間に、親友のレンスキーを殺したりしているんですから、オネーギンというのもけっこう馬鹿なのです。これが美しく見えるのはバレエでもオペラでもタイトルロールの力量によると思います。その意味では、今日23日のジェイソン・レイリーや21日のフリーデマン・フォーゲルも見てみたかったです。

 群舞も美しかったですね。プリンシパルの下のランクのソリストを揃えただけあって、実に力強く生命感に溢れた動きを見せてくれました。

 やや残念だったのは音楽です。指揮者のジェームズ・ダグルはまずまずだったと思うのですが、オケの東京シティ・フィルが良いところでホルンを始め色々と異音を出してくれました。バレエのオーケストラって2流と思われていて、実際そういうキャスティングをしたのでしょうか?でも、バレエこそ音楽が大切だと思います。その点新国立のレベルは高いですね。

この日のキャストは次の通り。

オネーギン
ジョン・クランコによる全3幕のバレエ
アレクサンドル・プーシキンの韻文小説に基づく

振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
編曲:クルト=ハインツ・シュトルツェ
装置・衣裳:ユルゲン・ローゼ
世界初演:1965年4月13日、シュツットガルト
改訂版初演:1967年10月27日、シュツットガルト


オネーギン:ロマン・ノヴィツキー

レンスキー:パブロ・フォン・シュテルネンフェルス
オネーギンの友人

ラーリナ夫人:メリンダ・ウィサム
未亡人

タチヤーナ:ヒョ・ジョン・カン
ラーリナ夫人の娘

オリガ:アンジェリーナ・ズッカリーニ
ラーリナ夫人の娘

彼女たちの乳母:ダニエラ・ランゼッティ

グレーミン公爵:マテオ・クロッカード=ヴィラ
ラーリナ家の友人

近所の人々、ラーリナ夫人の親戚たち/ 
サンクトペテルブルクのグレーミン公爵の客人たち:シュツットガルト・バレエ団


指揮:ジェームズ・タグル
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団



FC2Ad